2025年5月

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海洋研究の知見を集約するドイツ海洋研究アライアンス(DAM)の成果を評価(5月5日)

2019年に設立されたドイツ海洋研究アライアンス(Deutsche Allianz für Meeresforschung:DAM)が、初めて独立した専門委員会による評価を受け、その活動が非常に高く評価された。Claudia Müller連邦教育研究省政務次官は、DAMの海洋研究における科学的知見の集約と社会的課題への対応を結びつけた成果を強調し、特にCO₂貯蔵能力の研究、人間活動による海への影響、極端気象への対応といった研究ミッションの成果がすでに世界的注目を集めていると述べた。Bettina Martinメクレンブルク=フォアポンメルン州科学大臣は、連邦と州、研究機関、学際的な連携を促進するDAMの役割が将来的にも重要であることを評価した。評価報告書では、DAMの組織的・財政的な継続性の必要性も指摘されており、その点が連邦の連立政権協定にも盛り込まれていることが明らかにされた。

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DAAD、Friedrich Merz新首相の就任を歓迎。国際学術交流の前進に期待(5月6日)

ドイツ学術交流会( Deutsche Akademische Austauschdienst:DAAD)は、Friedrich Merz第10代ドイツ連邦首相就任と新政権の発足を祝福し、新政権の連立協定が国際学術交流の推進力とグローバル世界におけるドイツの高等教育の拠点としての魅力を高めるものとして評価した。DAAD会長のJoybrato Mukherjee教授は、Merz新首相の就任を祝福するとともに、新政権の連立協定がドイツの大学の国際化、ヨーロッパの科学力の強化に向けた推進力になることが期待されると述べた。外交政策との連携強化について、文化・教育外交の戦略的重要性が明記されたことや、DAADおよびフンボルト財団(Alexander von Humboldt-Stiftung:AvH)への資金強化が計画されていることは、今後4年間の協力の土台として心強いものと評価し、外務・研究・開発担当の新閣僚との連携及び協働にも期待を示した。具体的には、国際協力と学術の役割が強調されており、特に中国における専門知識の拡充、ワイマールトライアングル(ドイツ・フランス・ポーランド間の協力)など、具体的な提案も視野に入れていると述べた。

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アレクサンダー・フォン・フンボルト教授職(Humboldt-Professur)」授与式が開催(5月6日)

2025年のアレクサンダー・フォン・フンボルト教授職の授与式が5月5日にベルリンで開催され、6名の研究者がドイツの大学に迎えられることとなった。この称号は、最大500万ユーロの資金支援付きで、世界トップレベルの研究者をドイツの大学に招くものである。研究者たちはイタリア、イギリス、オーストラリアなどから、デュースブルク=エッセン大学やポツダム大学などに移籍する。授与式では、Robert Schlöglフンボルト財団会長とCem Özdemir教育・研究省担当大臣(当時)が、学問の自由と国際協力の重要性を述べた。また、Schlögl会長は、アメリカでの科学への政治的介入に強い危機感を表明し、科学の自由を守ることは全員の責任と述べ、抑圧を受ける国の研究者に対し、ドイツが安全な研究の場を提供すべきと語った。Özdemir大臣も、学問の自由は民主主義の柱であり、この賞はプロジェクトではなく『人』に贈り、短期的な成果の期待ではなく人への支援であると述べた。科学は国際的な交流と自由があってこそ発展できるというメッセージが、今回の授与式を通じて力強く発信された。

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ドイツ連邦研究・技術・宇宙担当大臣が就任(5月7日)

5月6日、Dorothee Bär氏が新たに「研究・技術・宇宙大臣(Bundesministerin für Forschung, Technologie und Raumfahrt)」として任命され、宣誓式を執り行った。翌日の7日には、前任のCem Özdemir教育・研究省担当大臣から正式に職務を引き継いだ。Özdemir前大臣は、短期間で達成された成果として、教育のデジタル化推進策である「デジタルパクト2.0」の連邦と州間での基本方針の合意を形成したこと、新極地研究船研究船「ポーラースターン II」 の建造が決定したこと、そして学問の自由をめぐる立場表明を挙げ、職員への感謝とともにBär新大臣への期待を表明した。Bär新大臣は、研究と技術をドイツの未来と繁栄に不可欠な柱として位置づけ、宇宙開発分野を再び研究省に統合する意義を強調した。また、航空宇宙分野を戦略的産業と位置づけ、大規模な研究開発投資を行うと表明した。

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DAAD設立100周年式典 Steinmeier連邦大統領がDAADを称賛(5月7日)

ドイツ学術交流会(Deutscher Akademischen Austauschdienst:DAAD)は5月6日、ベルリンのフンボルト・フォーラムで、政治、科学、社会各界から約500人の来賓を招き、設立100周年を祝った。Frank-Walter Steinmeier連邦大統領は、ビデオメッセージによる祝辞で、世界最大の国際学術交流機関として科学の自由を守り、困難に直面している学生や研究者を支援するDAADの活動を称賛した。DAAD会長のJoybrato Mukherjee教授は、DAADの支援者、パートナー、職員に対してその献身的な取り組みに感謝の意を表すとともに、変化の激しい世界において、DAADが科学協力の場で地球規模の責任を果たし、交流と協力のあらゆる機会を積極的に活用、形成することが求められると述べた。

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DAAD ドイツ科学評議会の提言を高く評価(5月13日)

ドイツ学術交流会(Deutscher Akademischen Austauschdienst:DAAD)は、科学評議会が発表した提言書「世界的変動の時代における科学と安全保障」を、ドイツの科学の国際競争力を高める重要な提案として高く評価した。この提言書は、地政学的な不安定さが増す中でも、国際的な学術協力を責任ある形で維持し、学問の自由と知識の安全性を両立させる方策を提示している。DAAD会長のJoybrato Mukherjee教授は、大学の国際化と国際的な学術交流が新たな課題に直面しているとし、今回の提言は適切な時期の鋭い分析であると述べた。科学評議会は、2019年に同評議会が設立を推奨したDAAD国際学術協力センター(KIWi)の活動も肯定的に評価し、国家レベルでの調整強化の必要性を認識し、国家による知の安全保障のための国家プラットフォーム(Nationalen Plattform für Wissenssicherheit)の創設を提案している。DAADは自らのネットワークや、KIWiの既存の専門知識、構造を集約し、ドイツの大学が「安全保障と学術」の問題に適切に対応できるよう引き続き支援していく姿勢を示した。

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HRKが大学のための「サイバーセキュリティ連携」設立を提言(5月14日)

ドイツ大学長会議(Hochschulrektorenkonferenz:HRK)は、マクデブルクで開かれた会合において、大学・各州・連邦政府が近年深刻化しているサイバー脅威への具体的な対処するため、大学、各州、連邦政府に対し、IT運用の安定維持や、特に保護が必要なデータの安全確保を図るための勧告を採択した。これは大学が高度にネットワーク化された機関であるため、研究・教育・技術・行政などの機密性の高いデータを抱えていることがあり、応用研究分野などの経済的価値のある情報が標的となっているためである。HRK会長のWalter Rosenthal教授は、大学のサイバーセキュリティ強化に向けた国家規模の連携が必要と訴え、HRK副会長のUlrike Tippe教授は、連邦政府には危機早期警戒システムの整備や研究促進、州をまたぐ情報共有など、全国的な責任があると指摘した。各州には大学間でのデータ保全の仕組み整備や、相談窓口の明確化、研修機会の拡充が求められており、大学自身も、段階的な防御策・緊急対応計画・定期的な訓練といった現代的かつ実践的な安全戦略の整備が不可欠である。

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2025年共同学術会議(Gemeinsame Wissenschaftskonferenz:GWK)の新体制:Falko Mohrs氏とDorothee Bär氏が議長及び副議長に就任(5月16日)

連邦政府と各州が共同で科学政策を協議する「共同学術会議(GWK)」が新体制を発表した。2025年の議長には、ニーダーザクセン州(Niedersächsischer)のFalko Mohrs科学・文化大臣、副議長にはDorothee Bär研究・技術・宇宙大臣が選出された。議長職は連邦と州が1年ごとに交代する仕組みであり、2026年と2027年の体制は、2025年11月に決定される。Bär大臣は、連邦と州が協力して推進させる科学政策にはGWKが不可欠であり、現在の不安定な国際状況においては、欧州全体での科学協力とオープンで強靭な科学システムが重要だと述べた。Mohrs大臣は、2025年が研究・イノベーション協定の節目の年であって主要研究機関の2026〜2030年の目標が決定される重要なタイミングであると述べ、新たな対話の場「パクトフォーラム」を通じて、戦略的な連携をさらに深めていく方針を示した。

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2024年のDAAD年次報告:困難な国際情勢の中でも学術交流は堅調に推移(5月20日)

5月20日、ドイツ学術交流会(Deutscher Akademischen Austauschdienst:DAAD )は、2024年の年次報告書を発表した。報告書では、国際的な不安定さ続いているにもかかわらず、学術交流とドイツの研究拠点としての魅力が維持されたことが強調された。DAAD会長のJoybrato Mukherjee教授は、地政学的な緊張、対中協力の難化、ロシアによるウクライナ侵攻の継続、米国トランプ大統領の再選など、2024年は先行きが不透明となる困難な年であったにも関らず、DAADは成功を収めたと述べた。ドイツは引き続き国際的な学術拠点として高い人気を誇り、約40万人の外国人学生・博士課程生、7.5万人の研究者が在独している。国際学生数では世界第3位、研究者では米国に次ぐ第2位である。DAADは、2024年に世界中で約14万人もの学生、卒業生、研究者、大学職員へ支援を行った。

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90億ユーロ規模の大学インフラ刷新計画をHRKが提言(5月20日)

ドイツ大学長会議(Hochschulrektorenkonferenz:HRK)は、老朽化が進む大学施設の改修および近代化に向けた連邦政府・議会・各州に早急な対応を求める決議を5月13日にマクデブルクで採択した。採択された決議では、新政権の連立協定に盛り込まれた、研究・教育活動を維持するための緊急措置に続き、連邦と州による長期的な改修・近代化の遅滞解消のための手続きを含む大学建築のスピード建設イニシアティブに言及している。HRK会長のWalter Rosenthal教授は、閉鎖中または閉鎖の危機にある大学施設の再生が最優先であり、応急処置でなく、大学を将来にわたって国際競争力のあるものにするための本格的な構造改革が必要と述べ、大学の変革を支える新たな連邦・州共同事業「変革する大学:トランスフォーマティブ大学」という恒久的な協定の締結を求めている。

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70の「エクセレントクラスター」が採択 -ドイツの大学研究を強化-(5月22日)

5月22日、連邦政府と各州が共同で推進する「エクセレンス戦略」によって、2025年からの今後7年間にわたり、ドイツ国内43大学における計70件のエクセレンスクラスターが支援を受けることが正式に決定された。連邦と州は総額5億3,900万ユーロを投入し、ドイツの先端研究の強化及び将来の競争力の確保を目指す。Dorothee Bär研究・技術・宇宙大臣は、ドイツの研究力強化に向けてエクセレンス戦略の新たな段階が始まり、非常に質の高い数々の応募の中から優秀な研究クラスターが選ばれたことがドイツの先端研究が確実に良い方向に進んでいることを証明していること、大学が過去数年間で戦略的に再編され独自性を強化が進んでいることに言及し、採択された関係者に対し祝意を表した。

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「エクセレンス戦略」第2回選考結果発表:70の研究クラスターが新たに選出(5月22日) ドイツ研究振興協会(Deutscher Forschungsgemeinschaft:DFG)と科学評議会(Wissenschaftsrates:WR)の共同プレスリリース)

5月22日、ドイツ連邦と各州による「エクセレンス戦略」第2回目選考の結果、98件の申請の中から合計70件のエクセレンスクラスターを助成対象として選定したことを発表した。この戦略は、ドイツの大学における最先端研究の強化を目的としており、国際的な専門家委員会(旧名称:専門審査委員会)の研究者と、連邦及び州の科学大臣で構成される卓越委員会により選出される。これにより、連邦政府と州政府との協定でエクセレンス戦略に定められた最大数のプロジェクトが承認された。選定された助成申請の非常に高い質と、最終的に選ばれたプロジェクトの科学的卓越性が強調された。また、彼らは同時に、この選考プロセスが国際的な科学的評価に基づき、科学と政治が合意して助成の決定がなされることから、この選考が科学主導であることも強調した。

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HRK、BAföG改革で教育の公平性を訴える(5月22日)

ドイツ大学長会議(Hochschulrektorenkonferenz:HRK)はマクデブルクでの会合で、政府の奨学金制度であるBAföG(連邦教育訓練支援法)の抜本的改革を求める決議を採択した。ドイツでは、子どもが大学に進学できるか否か、依然として親の経済力に大きく左右されている。政府のBAföGは、その格差を是正する役割を果たしてきたが、対象となりうる学生の割合が減少し、多くの学生が生活費を補うためにアルバイトを強いられており、構造的に貧困のリスクにさらされている。HRK副会長のSusanne Menzel-Riedl教授は、BAföGは導入当初に比べ、支援の実効性を失っているため、根本から見直す必要があると述べ、支援額を十分な水準に引き上げ、親の控除枠を拡大し、申請手続きを完全にデジタル化し、BAföGの全体的な運用を信頼性が高く透明なものにする必要があることが指摘された。

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ドイツ研究振興協会(DFG)が13の特別研究領域を助成(5月30日)

ドイツ研究振興協会(Deutsche Forschungsgemeinschaft:DFG)は、13の新しい特別研究領域(Sonderforschungsbereiche:SFB)を大学に設置し、先端研究の強化を図る。SFBの新設はボンで開かれた承認委員会によって決定され、新たな研究領域は、2025年10月から3年9か月間、総額1億7700万ユーロの助成金で支援される。テーマは、肝疾患から交通計画、海洋微生物まで多岐にわたる。13のうち7件は複数大学で共同運営されるSFB/Transregioである。特別研究領域は、連携した革新的な、高度で長期的な研究プロジェクトの推進を可能にするとともに、申請大学における重点分野と組織の形成を目的としており、最大12年間の助成を受けることができる。2025年10月時点で、DFGは合計262のSFBを支援する予定である。

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