2025年9月

DAAD「BintHo」調査報告 -留学先として人気の高いドイツ(9月2日)

ドイツ学術交流会(Deutschen Akademischen Austauschdienstes:DAAD)は、130以上の大学、11万5,000人以上の学生を対象として国際モビリティに関する「BintHo」調査を実施した。対象となった留学生の約4分の3が、ドイツが第一希望だったと回答し、留学に満足していると答えた。一方、日常生活では差別を経験したとの報告もある。DAAD会長のJoybrato Mukherjee教授は、ドイツの大学は国際的に高く評価されており、世界中の優秀な人材を長期的に呼び込む絶好の機会とし、同時に差別や排外主義に対して社会全体で対応する必要があると述べた。ドイツが選ばれる理由としては、技術力の高さ、英語での授業、魅力的なキャリアの見通し、生活コストの低さなどが挙げられる。一方、ドイツ学生の海外留学意欲も高い。海外経験のない学生の60%が留学に関心を持つが、費用や家族知人との離別などを理由に、実際に実施するのは4分の1にとどまる。留学後は自信の向上、語学力の習得、異文化理解の深化が報告されている。

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アレクサンダー・フォン・フンボルト財団とマックス・プランク協会、法学・政治学・歴史学の最前線で活躍する3人の研究者を表彰(9月2日)

アレクサンダー・フォン・フンボルト財団(Alexander von Humboldt-Stiftung:AvH)とマックス・プランク協会(Max-Planck-Gesellschaft)は、法学・政治学・歴史学で卓越した業績を挙げた3人の研究者を、本年度のマックス・プランク・フンボルト研究賞及びマックス・プランク・フンボルト・メダルの受賞者として発表した。マックス・プランク・フンボルト研究賞は、ケンブリッジ大学国際法教授のSurabhi Ranganathan氏が受賞し、150万ユーロが授与される。国際法・環境法の専門家である同氏は、海洋ガバナンスと海洋法における政治的課題に焦点を当てている。マックス・プランク・フンボルトメダルは、グローバル・サウスにおける福祉国家の発展に関する研究を行っているブラウン大学Prerna Singh氏、そして古代から中世への移行期における歴史研究を行うカリフォルニア大学ロサンゼルス校のJamie Kreiner氏へ授与される。3つの賞はいずれも12月2日にベルリンで授与式が行われる。

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ミュンヘン工科大学のJoachim Henkel教授が、イノベーション審議会(EFI)の委員に任命(9月3日)

ドイツ連邦研究・技術・宇宙省(Bundesministeriums für Forschung, Technologie und Raumfahrt:BMFTR)は、イノベーション審議会(Expertenkommission Forschung und Innovation:EFI)の委員として、テクノロジーおよびイノベーション・マネジメントの専門家であるミュンヘン工科大学のJoachim Henkel教授を任命した。任期満了となったUwe Cantner教授の後任となる。

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ヨーロッパ最速のスーパーコンピューター「JUPITER」稼働開始(9月5日)

9月5日、ユーリッヒ研究センターにおいて、ヨーロッパ最速のスーパーコンピューター「JUPITER(ジュピター)」の公開式典が開催され、Friedrich Merz首相とDorothee Bär研究・技術・宇宙大臣が出席した。JUPITERは最大で1兆回の計算を行うことができ、大規模なAIモデルの学習も1週間以内で完了する性能を持つ。ユーリッヒ・スーパーコンピューティング・センターが開発を主導し、ヨーロッパ高性能コンピューティング共同事業(EuroHPC JU)と協力して導入が進められた。

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OECD、報告書「Education at a Glance 2025」を発表(9月9日)

経済協力開発機構(OECD)は、各国の教育制度を比較する報告書「Education at a Glance – Bildung auf einen Blick 2025」を発表した。ドイツに関する結果は、ドイツ連邦研究・技術・宇宙省(Bundesministeriums für Forschung, Technologie und Raumfahrt:BMFTR)、連邦家族・高齢者・女性・青少年省(Bundesministerium für Bildung, Familie, Senioren, Frauen und Jugend)、各州文部大臣常設会議(Kultusministerkonferenz:KMK)とOECDが共同記者会見で紹介した。ドイツは、MINT(数学、情報科学、自然科学、技術)や職業教育、若者の雇用可能性の分野において国際比較で優れた結果を示している。一方、低学歴の成人の非就労率は依然として高く、社会的格差、社会的不平等が教育成果に影響している点が課題として示されている。

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DAADとIIE、初の共同報告書を発表(9月11日)

欧州国際教育協会(EAIE)年次会議において、ドイツ学術交流会(Deutschen Akademischen Austauschdienstes:DAAD)と米国の国際教育研究所(Institute of International Education:IIE)は、欧州と米国の間における学術・研究協力の価値を分析した初の共同報告書を発表した。報告書のタイトルは 「Transatlantic Mobility in Higher Education and Research: A Cornerstone of Transatlantic Relations(高等教育と研究における大西洋間モビリティ:大西洋関係の礎)」 であり、学生・研究者・教員の移動の実態を時系列で検証し、現代および将来の変容する世界的状況に照らして考察する。また、14の欧州諸国における交流プログラムや、Erasmus+、Horizon Europe などの具体的な事例も取り上げている。

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ドイツ学術機関連盟、ウクライナ国際科学・研究・イノベーション連合に加盟(9月11日)

ドイツの主要科学機関で構成される学術機関連盟(Allianz der Wissenschaftsorganisationen)は、ウクライナの研究・教育・イノベーション分野の復興と近代化を支援するため、ウクライナ国際科学・研究・イノベーション連合(International Coalition for Science, Research, and Innovation in Ukraine)に加盟した。この連合は、2025年7月11日にローマで開催されたウクライナ復興会議(URC)で採択された「ウクライナの科学・研究・イノベーションに関するローマ宣言(Rome Declaration of Intent for Science, Research, and Innovation in Ukraine)」に基づき設立されたもので、ウクライナの研究体制の再建・近代化・国際的統合を進めるための具体的な行動計画を策定し、国際パートナー間の構造的な対話を促進することを目的としている。連合への加盟により、ドイツの学術界は国際的な枠組みの中でウクライナ支援をより効果的に進めることが可能となる。

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ドイツ学術機関連盟、次期EU研究・イノベーション枠組み計画(FP10)への提言を発表(9月22日)

現行の第9次EU研究・イノベーション枠組み計画「Horizon Europe」が2027年12月に終了するにあたり、欧州委員会は2025年7月に現行の「Horizon Europe」の後継として、研究とイノベーションを欧州成長戦略の中核に据えた第10次計画(FP10)とその予算枠組み(予算を倍増し、1,750億ユーロ規模とする)を発表した。それを受けて、ドイツ科学機関連合はこの提案を歓迎しつつ、今般、次の4つの提言を発表した。

・研究・イノベーション予算を2,000億ユーロ規模に拡大すること

・トップダウンの優先事項とボトムアップの発見を両立させること

・FP10とECFの運営における透明性と研究コミュニティの参加を強化すること

・Erasmus+の予算拡大を図るなど、人材育成と流動性の促進すること

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DFG、応用科学大学における5つの新しい「リサーチ・インパルス」採択(9月25日)

ドイツ研究振興協会(Deutschen Forschungsgemeinschaft:DFG)は、応用科学大学における知識主導型研究を支援するプロジェクトであるリサーチインパルス(Forschungsimpulse:FIP)について、新たに5件を採択した。プロジェクトは2026年1月1日より活動を開始し、5年間で総額約3,100万ユーロの資金が提供される。特に研究実績が顕著な機関が知識主導型研究をさらに発展させることを支援することを目的としており、DFGはこれらの機関における研究環境の改善を通じ、ドイツの研究システムにおける応用科学大学の潜在能力を引き出そうとしている。第1回公募で採択された10件と合わせ、現在DFGは合計15件のリサーチインパルスを支援している。新たに採択された研究テーマは、自動運転から記憶文化など多岐にわたる。

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DFG、4つの新しい研究ユニットを設置(9月26日)

ドイツ研究振興協会(Deutschen Forschungsgemeinschaft:DFG)は、4つの新たな研究グループを設置する。これはDFG協議会が、評議会の提案に基づき決定したものである。新規ユニットには総額約2,050万ユーロの資金が提供される。新設ユニットに加え、10の研究ユニットと1つの臨床研究ユニットについて、追加の資金提供期間を延長することが決定された。新設ユニットのうち1つは、ドイツ語圏3か国による国際協力プログラム(D-A-CH)のもと、スイス国立科学財団(Swiss National Science Foundation:SNSF)との共同資金提供により運営される。新設ユニットの研究テーマは、バイリンガリズムから大腸がんの治療まで多岐にわたる。

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